布施弁天
布施弁天は、千葉県柏市にある真言宗の寺院で、上野不忍池・江の島とともに「関東三弁天」のひとつとされています。現在の利根川沿いの丘の上に建ち、本堂・楼門・鐘楼はいずれも江戸時代のもので、千葉県の指定文化財です。多宝塔式の鐘楼は「からくり伊賀七」とよばれた谷田部藩の飯塚伊賀七が設計したもので、八角形の基壇に十二本の柱を建てた独特の様式です。
旅行先の地図
(この地図の緯度:35.899047, 経度:140.005189)
旅行先の概要
御本尊 | 弁財天(秘仏。12年ごとの巳年に御開帳) |
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所在地 | 千葉県柏市布施1738 |
交通 |
JR常磐線・東武野田線「柏駅」(西口)から東武バスイースト(柏04系統・布施弁天行き)経由で約20分、「布施弁天」停留所下車 常磐自動車道「柏IC」から車で約15分 |
拝観料 | 無料 |
駐車場 | 境内下に舗装された無料駐車場(身障者トイレ併設)あり。他にも砕石を敷いた駐車場が複数あり。 |
URL | 布施弁天 |
連絡先 | 紅龍山 布施弁天 東海寺 04-7131-7317 |
歴史・由来
布施弁天は、千葉県柏市にある真言宗の寺院で、正式には「紅龍山松光院東海寺」といい、江島弁天(神奈川県藤沢市の江島神社)・中島弁財天(東京都台東区の寛永寺不忍池辨天堂)または老女弁天(東京都台東区の浅草寺弁天堂山)とともに「関東三弁天」のひとつに数えられます。
現在は布施弁天のある亀の甲山の一帯は利根川流域の低湿地帯となっていますが、かつては藺沼(いぬま)とよばれる沼地が広がっており、東海寺とは別に、水の神にあたる弁財天社を祀っていました。
しかし、利根川対岸の戸頭村(今の茨城県取手市)まで渡船する「七里ヶ渡し」(新大利根橋付近)への街道筋にあたり、弁財天社への参詣者が増えすぎたため、元禄15年(1702)には別当の東海寺からわざわざ留守居を出張させています。
宝永2年(1705)には、今の柏市布施字古谷の香取神社の境内にあった東海寺そのものが、領主の許可を得てこの弁財天社の境内に後から移転してきたという経緯があります。
縁起によれば、大同2年(807)、天地鳴動して紅龍が現れ島をつくり、島の東側の岩窟が夜ごとに光りを放つ中、里人が夢に見た天女が「我は但馬国朝来郡筒江郷(今の兵庫県朝来市)から来れり」と告げたといいます。
夢から醒めて岩窟のなかを探してみると、三寸(約9センチ)ほどの小さな像を見つけたため、藁葺きの小祠を建てて安置したのが布施弁天のはじまりで、後に弘法大師が関東地方を巡錫の折、但馬国において自ら彫刻したはずの弁財天の像がこの地に祀られていると知り、寺を建てて山の名を「紅龍山」、里の名を「布施」と定めます。
都に戻った弘法大師空海の奏聞を受けて、弘仁14年(823)、嵯峨天皇から田園の寄付があり、勅願寺として堂塔伽藍が造立されますが、平将門の乱の兵火で焼失したのを経基王(源経基)が再興し、兵火を逃れた尊像が松の木の上で光り輝いて経基王の袖に飛び込んできたという逸話から「松光院」と名付けられました。
もっとも、江戸時代の『布施弁天来歴書』という史料では、延宝2年(1674)、東海寺の祐長上人と協力し、布施村の後藤又右衛門が願主となり、亀の甲山に生えていた椿の木の下に藁葺きの小社を建てて弁才天を祀ったのが創建と記されています。
江戸時代当時の布施村は上野国沼田藩の飛び地の領地だったため、藩主の本多家が中心となって98名の大名から寄進を集め、享保2年(1717)に建立したものが現在の本堂です。正面に唐破風が付いており、総朱塗りで華やかな彫刻に彩られているのが特徴的です。
楼門は文化7年(1810)の建立で、2階建てで入母屋造り・瓦葺きの屋根をいただいていますが、1階部分は龍宮門のようなアーチ状となっており、現在はコンクリートに置き換えられてはいるものの、もとは漆喰が白く塗られていたと見られてます。
鐘楼は文化15年(1818)の建立で、みかげ石の基壇部分は八角形、十二支の彫刻を配した柱は十二角形、高欄は円形で、屋根は入母屋造りで四角形という独特の様式となっています。常陸国谷田部藩(今の茨城県つくば市)の名主で当時から発明家として知られていた飯塚伊賀七(「からくり伊賀」または「からくり伊賀七」とも)が設計したものです。
これら本堂・楼門・鐘楼のいずれもが千葉県重要文化財に指定されているほか、寺宝として龍の模様が白く浮き出た、宇賀神弁財天女の御正体とされる珍しい「蟠龍石」があり、江戸時代の医師・赤松宗旦の『利根川図志』にもそのスケッチが挿図に描かれています。
布施弁天は江戸時代から名所として知られ、「蕉門十哲」のひとりである室井其角や小林一茶が参詣に訪れており、それぞれ「玉つばき 昼と見へてや 布施籠」「米蒔も 罪ぞよ鶏が け合ぞよ」の句を残しています。
御本尊の弁財天は秘仏とされ、江戸時代には深川永代寺(今の深川不動堂付近にあり明治時代の廃仏毀釈により廃寺、後年再興されている)ほかで出開帳も行われていましたが、現在は弁財天の化身とされる白蛇にちなんで巳年の12年ごとの御開帳のみで、月例祈祷の際には蛇の好きな卵を供えています。
もとは境内地だった布施弁天の周囲は、戦後に風致公園の「あけぼの山公園」、隣接の「あけぼの山農業公園」として整備され、サクラ・チューリップ・ハナショウブ・ヒマワリ・コスモスなどの季節の花々や風車が織りなす風景を楽しめる観光スポットです。
車椅子で旅行するポイント
本堂 鐘楼 宝物殿 三重塔 水屋 楼門 観音堂 総受付 弘法大師 大日堂 虚空蔵菩薩 愛染明王 観喜天 茶屋「花華」 トイレ 弁天茶屋 鳥居 妙見大菩薩(布施妙見) 布施弁天バス停 あけぼの山公園 日本庭園 柏泉亭 大日如来 薬師如来 安産不動明王 さくら山 千葉県道47号守谷流山線 |
移動のしやすさ
★★★★☆
バリアフリーの状況
布施弁天の正面楼門からは石段になっているが、急坂ではあるものの自動車がすれ違える程度の幅員がある東側のインターロッキング舗装路から境内に進入できる(一般車は進入禁止)。本堂横や鐘楼付近は玉砂利が敷かれ平坦な広いスペースになっており、車の交通安全祈祷なども通常はここで行う。境内宝物館裏のトイレは身障者用ではないが、境内下にある舗装された駐車場のトイレ棟には身障者用が併設されている。
周辺の名所・観光スポット
あけぼの山公園・あけぼの山農業公園
「あけぼの山公園」は市制40周年を記念して千葉県柏市が設置した風致公園で、5.8ヘクタールのさくら山には春になると500本のソメイヨシノの花が咲くほか、県内唯一の本格茶室の「柏泉亭」をもつ日本庭園や水生植物園などが園内に設けられています。4月上旬には「桜まつり」が開催され、各種のステージイベントなどでにぎわいます。
隣接の「あけぼの山農業公園」は、四季折々の花が咲く花壇や大型風車がシンボルの体験型の公園で、バーベキュー場や農家食堂、実習室などの施設を有し、春に「チューリップフェスティバル」、初夏に「あじさいウィーク」、盛夏に「ひまわりウィーク」、秋に「あけぼの山農業公園まつり」が開催されます。
【身障者用駐車場・トイレ・スロープ・車椅子貸出あり】
■参考リンク:あけぼの山農業公園